ホンダ・F型エンジン

曖昧さ回避 この項目では、四輪車用エンジンについて説明しています。自転車用補助エンジン「カブF型」については「ホンダ・カブ#カブ(1952年)」をご覧ください。
ホンダ・F型エンジン
F22C
生産拠点 本田技研工業
製造期間 1989年9月 - 2009年8月
タイプ 直列4気筒SOHC16バルブ
直列4気筒DOHC16バルブ
直列4気筒SOHCVTEC16バルブ
直列4気筒DOHCVTEC16バルブ
排気量 1.8L,2.0L,2.2L,2.3L
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ホンダ・F型エンジン(ホンダ・Fがたエンジン)は、本田技研工業で製造されていた中型車種及びS2000用の直列4気筒ガソリンエンジンである。

位置付けと特徴

A型の後継機種で、B型C型の間を埋め、H型とは兄弟設計となっている[1]SOHCDOHCのいずれも2個ずつの吸・排気バルブを備え、燃焼室の天井中央部に点火プラグが配置された。また、SOHC仕様はカムシャフトを避ける目的で、上側を吸気バルブ側に傾けている。4連シリンダーボアのアルミダイカストシリンダーブロックは、クランクシャフトの支持剛性を上げるためディープ・スカート形状を採用。2次のエンジンの振動を低減させるためのバランサーも装着された。

SOHC/DOHC

  • F18A/F20A/F20B/F22A/F22B

キャブレター(ダウンドラフト、固定ベンチュリ)仕様とPGM-FI(マルチポイント-インテークマニホールド噴射)仕様をラインナップし、キャブレター仕様には空燃比をより精密に制御するための2次エアが、PGM-FI仕様のインテークマニホールドには可変吸気装置が採用されている。

SOHC VTEC

  • F18B/F20B/F22B/F22B/F23A

高出力と実用性を両立する目的で可変バルブタイミング・リフト機構が装備されている。吸気側カムシャフトにのみ2種類のカム駒を設け、そこに接するスイングアームを切り替えて吸気バルブの開閉タイミング(バルブタイミング)とリフト量を変化させる仕様と、エンジンの低回転域で吸気バルブのうち片方をほぼ休止してリーンバーン運転をする「VTEC-E」に類似した仕様がある。さらに、ロッカーアームのカムとの摺動部にはフリクションの低減のためローラーを適用。

PGM-FI仕様のみだが、低燃費化のために一部仕様へインテークマニホールドから2次エアを供給し、燃料の霧化を促進するAAI(エアアシストインジェクター)と、吸気バルブ休止時に機能するスワールポートとが装備されている。さらに電動EGRバルブを適用して、EGR流量の大流量化と高精度の制御を行い、NOx排出の低減と低燃費化を図った。

DOHC VTEC (第1世代)

  • F20B

吸・排気ともバルブタイミングとリフト量を変化させ、中・低速域のトルクと高速域の出力を両立させている。

DOHC VTEC (第2世代)

  • F20C/F22C

S2000用に開発され、NAエンジンでの高出力化を実現するために各部を進化させたもので、従来のDOHC VTECをさらなる高回転、高出力化させながら、軽量/コンパクト化も図られている。FR車に搭載するため、回転方向は一般的な時計回りである。

フリクションの低減目的でロッカーアームのカムとの摺動部にローラーを適用し、そのローラーにVTECの連結ピンを内蔵することにより、慣性重量を低減し高回転化に対応した。カムシャフトの駆動には既存のベルト式より幅が薄いタイミングチェーンが採用され[2]、シリンダーヘッドのコンパクト化に寄与している。また、軽量化と強度upのためにアルミ鍛造ピストンを適用し、浸炭が施された鍛造製コネクティングロッドは小端部をテーパー形状化して慣性重量を低減、クランクシャフトの軸受けはラダーフレーム構造を採用するなど、各部に高回転化の対応が図られている。

スロットルレスポンスのために容積が減らされたインテークマニホールドは、高出力化のためにポート形状をストレート化した。エキゾーストマニホールドステンレス製の4-2-1集合で、排気抵抗の低減や排気脈動による排気効率を高めた。

低排出ガス化の面では、COHC、NOxとも平成12年排出ガス規制値を50%以上下回っている。後のマイナーチェンジでは「U-LEV」に初めて適合した車両となった。排気ガス浄化を行う三元触媒には背圧や熱容量が少ないメタルハニカムを使用し、エアポンプによる排気2次エアー供給システムが装備されている。

歴史

バリエーション

F18A

  • 弁機構:SOHC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,849cc
  • 内径×行程:85.0mm×81.5mm
  • 燃料供給装置形式:キャブレター
  • 参考スペック(CB1 アコード)
    • 最高出力:77kW(105PS)/6,000rpm
    • 最大トルク:143N·m(14.6kgf·m)/4,000rpm

F18B

  • 弁機構:SOHC VTEC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,849cc
  • 内径×行程:85.0mm×81.5mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(CF3 アコード)
    • 最高出力:103kW(140PS)/6,100rpm
    • 最大トルク:169N·m(17.2kgf·m)/5,000rpm

F20A

SOHC (キャブレター)
  • 弁機構:SOHC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,997cc
  • 内径×行程:85.0mm×88.0mm
  • 燃料供給装置形式:キャブレター
  • 参考スペック(CB3 アコード)
    • 最高出力:81kW(110PS)/6,000rpm
    • 最大トルク:158N·m(16.1kgf·m)/3,80rpm
SOHC (PGM-FI)
  • 弁機構:SOHC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,997cc
  • 内径×行程:85.0mm×88.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(CB3 アコード)
    • 最高出力:96kW(130PS)/5,500rpm
    • 最大トルク:177N·m(18.1kgf·m)/4,500rpm
DOHC
  • 弁機構:DOHC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,997cc
  • 内径×行程:85.0mm×88.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(CB3 アコード)
    • 最高出力:110kW(150PS)/6,100rpm
    • 最大トルク:186N·m(19.0kgf·m)/5,000rpm

F20B

SOHC
  • 弁機構:SOHC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,997cc
  • 内径×行程:85.0mm×88.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(CD4 アコード)
    • 最高出力:99kW(135PS)/5,700rpm
    • 最大トルク:181N·m(18.5kgf·m)/4,500rpm
SOHC VTEC
  • 弁機構:SOHC VTEC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,997cc
  • 内径×行程:85.0mm×88.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(CF4 アコード/トルネオ)
    • 最高出力:110kW(150PS)/6,000rpm
    • 最大トルク:186N·m(19.0kgf·m)/5,000rpm
DOHC VTEC
  • 弁機構:DOHC VTEC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,997cc
  • 内径×行程:85.0mm×88.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(CF4 アコード/トルネオ)
    • 最高出力:147kW(200PS)/7,200rpm
    • 最大トルク:196N·m(20.0kgf·m)/6,600rpm

F20C

  • 弁機構:DOHC VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:1,997cc
  • 内径×行程:87.0mm×84.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(AP1 S2000)
    • 最高出力:184kW(250PS)/8,300rpm
    • 最大トルク:218N·m(22.2kgf·m)/7,500rpm

F22A

  • 弁機構:SOHC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:2,156cc
  • 内径×行程:85.0mm×95.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(CB9 アコードワゴン)
    • 最高出力:103kW(140PS)/5,600rpm
    • 最大トルク:192N·m(19.6kgf·m)/4,500rpm

F22B

SOHC
  • 弁機構:SOHC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:2,156cc
  • 内径×行程:85.0mm×95.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(BB5 プレリュード)
    • 最高出力:99kW(135PS)/5,200rpm
    • 最大トルク:192N·m(19.6kgf·m)/4,500rpm
SOHC VTEC
  • 弁機構:SOHC VTEC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:2,156cc
  • 内径×行程:85.0mm×95.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(CD5 アコード)
    • 最高出力:107kW(145PS)/5,500rpm
    • 最大トルク:198N·m(20.2kgf·m)/4,500rpm
DOHC
  • 弁機構:DOHC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:2,156cc
  • 内径×行程:85.0mm×95.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(BA8 プレリュード)
    • 最高出力:118kW(160PS)/6,000rpm
    • 最大トルク:201N·m(20.5kgf·m)/5,000rpm

F22C

  • 弁機構:DOHC VTEC チェーン駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:2,156cc
  • 内径×行程:87.0mm×90.7mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(AP2 S2000)
    • 最高出力:178kW(242PS)/7,800rpm
    • 最大トルク:221N·m(22.5kgf·m)/6,500~7,500rpm

F23A

  • 弁機構:SOHC VTEC ベルト駆動 吸気2 排気2
  • 排気量:2,253cc
  • 内径×行程:86.0mm×97.0mm
  • 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射式(PGM-FI)
  • 参考スペック(RA6 オデッセイ)
    • 最高出力:110kW(150PS)/5,800rpm
    • 最大トルク:206N·m(21.0kgf·m)/4,800rpm

搭載車種

F18A
F18B
F20A
F20B
  • アコード(CD4)
  • アコード/トルネオ(CF4/5)
  • アコードクーペ(CG4)
  • いすゞ・アスカ(CJ1/3)
F20C
F22A
F22B
F22C
  • S2000(AP2)
F23A
  • アコードワゴン(CF6/7)
  • アヴァンシア(TA1/2)
  • オデッセイ(RA3/4/6/7)
  • アコードクーペ(CG3)
  • CL(YA3)

脚注

  1. ^ カムシャフトやクランクシャフト、ガスケットキットなどが仕様によってはH型と共通品番である。ホンダ電子パーツカタログより。
  2. ^ カムシャフト駆動方式の変更はボルグワーナーの手による。

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、ホンダ・F型エンジンに関連するカテゴリがあります。
ウィキメディア・コモンズには、ホンダ・S2000のエンジンに関連するカテゴリがあります。

外部リンク

  • 本田技研工業(オフィシャル)
  • テクノロジー・ダイジェスト F20C(オフィシャル)
ホンダ自動車用エンジン系譜図 1963年 - 1989年(1990年代以降 →)
1960年代 1970年代 1980年代
3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
直列2気筒 軽自動車 N型/LN型/TN型
EA型
EH型
小型車 N型
直列3気筒 軽自動車用 E型
直列4気筒 AK型
小型車用 AS型
AL型/AP型
EB型
EC型
ED型
EJ型
EM型
EN型
ER型
EV型
EW型
ZA型
ZC型
D型
中型車 H1300E型
EF型
EK型
EL型
EP型
ES型
ET型
EY型
A型
B型
F型
直列5気筒 G型
V型6気筒 C型
(← 1990年代以前)ホンダ自動車用エンジン系譜図 1990年以降
1990年代 2000年代 2010年代 2020年代
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3
直列3気筒 軽自動車 E型
P型
S型
Bセグメント E型(ハイブリッド)
P型
直列4気筒 D型
L型
Cセグメント ZC型
A型
B型
D型
F型
K型 K型(ターボ)
L型(ハイブリッド) L型
R型
Dセグメント F型
H型
K型
L型(ハイブリッド)
直列5気筒 G型
V型6気筒 Eセグメント C型
J型
ディーゼル N型
ホンダ
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