陳琳

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陳琳
後漢
司空軍師祭酒
出生 生年不詳
徐州広陵郡射陽県
死去 建安22年(217年
拼音 Chén Lín
孔璋
主君 何進袁紹曹操
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陳 琳(ちん りん)は、中国後漢末期の文官。建安七子の一人。字は孔璋徐州広陵郡射陽県の出身。

生涯

はじめ何進に仕え、主簿を務めた。光熹元年(189年)、何進が宦官誅滅のため諸国の豪雄に上洛を促すことを図るとこれに反対したが、容れられなかった。

何進の死後は冀州に難を避け、袁紹の幕僚となる。袁紹は臧洪を包囲すると、帰順を迫る書簡を陳琳に書かせる。臧洪はその返書で陳琳のことを「故友」などと記しながら、帰順勧告は拒否し、陳琳と決別した[1]

建安5年(200年)、官渡の戦いに先立ち、袁紹が中原全土に配した曹操打倒の檄文を記した[2]。曹操はこの檄文を読み「ここに書かれた曹操という人物像を考えると、読んだ自分でさえ怒り心頭に発する」と評している。また、この檄文は後世、南朝梁の『文選』に、名文として収められた。

建安7年(202年)の袁紹没後は末子の袁尚に仕える。争う袁譚と袁尚、双方の登用を拒否した崔琰が幽閉されると、その擁護に努めた[3]

建安9年(204年)、曹操に城を包囲されると降伏の使者となるが、袁尚が許されることはなかった[2]。鄴が陥落し曹操の前に引き立てられると、先に書いた曹操批判の檄文を読まされる。その内容は曹操のみならず、その父の曹嵩や祖父の曹騰までをも痛烈に批判するものだったが、曹操はこの檄文を誉めた上で「なぜわしの祖父や父まで辱めたか」と尋ねた。陳琳は「引き絞った矢は射ぬわけにはいきませぬ」と答えたため、曹操から許されたという。

以降は曹操に仕え、司空軍師祭酒、のち門下督となる。阮瑀とともに軍事や国政に関する多くの文書を記した。建安22年(217年)、疫病に罹って病死した。

評価

曹丕が著書『典論』の中で「現代の文学者の七人」の一人として名をあげ、陳琳は建安七子の一員として高名を馳せる。曹丕は呉質に送った手紙の中では「文章はとりわけ雄健だが、やや繁雑」と評している。また、曹植楊修に送った手紙の中で「辞賦には熟達しておらず、うぬぼれから自分では司馬相如と同じ風格があると思いこんでいる」[4]と評した。

同郷の張紘とは、文人としてお互いを称賛し合っている[5]

後世では呉融が「陳琳墓」なる詩を作り[6]、「筆先をほしいままにし自分の利益を得たが、あの世でどの面を提げて袁公にまみえるのか」と、その変節を非難している。

出典

  • 『三国志』巻21 魏書 王粲伝附陳琳伝 s:zh:三國志/卷21#附_陳琳

脚注

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  1. ^ 『三国志』魏書臧洪伝。
  2. ^ a b 『三国志』魏書袁紹伝。
  3. ^ 『三国志』魏書崔琰伝。
  4. ^ 『三国志』魏書陳思王植伝の注に引く『典略』。
  5. ^ 『三国志』呉書張紘伝の注に引く『呉書』。
  6. ^ 全唐詩巻685。
陳寿撰 『三国志』 に立伝されている人物および四夷
魏志
(魏書)
巻1 武帝紀
巻2 文帝紀
巻3 明帝紀
巻4 三少帝紀
巻5 后妃伝
巻6 董二袁劉伝
巻7 呂布臧洪伝
巻8 二公孫陶四張伝
巻9 諸夏侯曹伝
巻10 荀彧荀攸賈詡伝
巻11 袁張涼国田王邴管伝
巻12 崔毛徐何邢鮑司馬伝
巻13 鍾繇華歆王朗伝
巻14 程郭董劉蔣劉伝
巻15 劉司馬梁張温賈伝
巻16 任蘇杜鄭倉伝
巻17 張楽于張徐伝
巻18 二李臧文呂許典二龐
閻伝
巻19 任城陳蕭王伝
巻20 武文世王公伝
巻21 王衛二劉傅伝
巻22 桓二陳徐衛盧伝
巻23 和常楊杜趙裴伝
巻24 韓崔高孫王伝
巻25 辛毗楊阜高堂隆伝
巻26 満田牽郭伝
巻27 徐胡二王伝
巻28 王毌丘諸葛鄧鍾伝
巻29 方技伝
巻30 烏丸鮮卑東夷伝

(蜀書)
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巻36 関張馬黄趙伝
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巻39 董劉馬陳董呂伝
巻40 劉彭廖李劉魏楊伝
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巻42 杜周杜許孟来尹李譙
郤伝
巻43 黄李呂馬王張伝
巻44 蔣琬費禕姜維伝
巻45 鄧張宗楊伝
呉志
(呉書)
巻46 孫破虜討逆伝
巻47 呉主伝
巻48 三嗣主伝
巻49 劉繇太史慈士燮伝
巻50 妃嬪伝
巻51 宗室伝
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巻54 周瑜魯粛呂蒙伝
巻55 程黄韓蔣周陳董甘淩
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巻58 陸遜伝
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巻61 潘濬陸凱伝
巻62 是儀胡綜伝
巻63 呉範劉惇趙達伝
巻64 諸葛滕二孫濮陽伝
巻65 王楼賀韋華伝