石井遊佳

石井 遊佳(いしい ゆうか、1963年11月[1] - )は日本の小説家日本語教師

略歴

大阪府枚方市生まれ[2]大阪府立大手前高等学校早稲田大学法学部卒業[3]

大学在学中、文学研究会に所属して「小菅陽子」の筆名でいくつかの小説を書いた[4]。卒業後はアルバイトの傍ら習作を書き、20代の後半から投稿を始めた[5]草津温泉で仲居をしていた33歳のときに文學界新人賞の最終選考に残ったことから、その後大阪に戻って投稿生活を送る[5]。36歳のとき、仏教を学ぼうと東京大学文学部インド哲学仏教学専修課程に学士入学し、中国仏教を専攻[6][7][8]。修士3年のときにインド文学研究室の男性と結婚[6]。その後、同大学院(人文社会系研究科)の博士課程に進み、学会発表を終えるなどしたが、インドへの留学が決まった夫(サンスクリット語研究者石井裕[9])に帯同するため、5年半の研究を絶って満期退学[2][6]。その後は暑季を除き、3年ほどヴァーラーナシーで暮らした[6]

2009年に帰国して1年半から2年弱ほど朝日カルチャーセンターの小説講座に通い、『海燕』・『野性時代』の元編集長・根本昌夫の指導を受けた[6]東日本大震災のあと避難したネパールカトマンドゥで、日本語学校校長に頼まれて1年間にわか日本語教師を務めた[6]。帰国後、夫が日本語教師の学校に通い資格を取得[10]。2015年からは、求人があった南インドチェンナイにあるIT企業で、夫とともに日本語教師として働いた[8]

2017年、『百年泥』で第49回新潮新人賞を受賞[2]。2018年、同作で第158回芥川龍之介賞を受賞[2][8]。なお同時受賞の若竹千佐子も、同じく根本昌夫が教えていた別の小説講座(早稲田大学エクステンションセンター小説講座)の受講生だった[6][11]

芥川賞受賞ののち、チェンナイより帰国して作家に専念、2020年頃より大阪市内に在住[2][12]

作品リスト

単行本

  • 『百年泥』(『新潮』2017年11月号掲載 | 新潮社、2018年1月 | 新潮文庫、2020年7月)
  • 『象牛』(「象牛」『新潮』2018年10月号 /「星曝し」『新潮』2020年4月号 | 新潮社、2020年9月)

単行本未収録

小説

  • 「水妖生死奇譚」- 『新潮』2022年12月号
  • 「網ダナの上に」- 『すばる』2023年1月号
エッセイ
  • 「百年泥々」 - 『すばる』2018年2月号
  • 「時ならぬ事々──挿話」 - 『群像』2018年2月号
  • 「〈教訓〉について」 - 『文学界』2018年3月号
  • 「東大で仏教を学び、夫とインドへ」 - 『文藝春秋』2018年3月号
  • 「ダブル受賞者は同じ先生の生徒だった 先生、私たち芥川賞獲りました!」(若竹千佐子、根本昌夫との鼎談) - 『文藝春秋』2018年4月号
  • 「こんなことしてていいのか日記 石井遊佳 編――①」 - 『すばる』2018年7月号
  • 「こんなことしてていいのか日記 石井遊佳 編――②」 - 『すばる』2018年8月号
  • 「こんなことしてていいのか日記 石井遊佳 編――③」 - 『すばる』2018年9月号
  • 「インドねこ女神さま」 - 『文藝春秋』2019年12月号
  • 「私と受験 小説家への夢、インドとの因縁、呪われた執拗さは入試で養われた」 - 『中央公論』2020年2月号
  • 「旅のおわり・小説のはじまり」 - 『新潮』2021年9月号
  • 村田喜代子『姉の島』書評」 - 『文學界』2021年10月号
  • 李琴峰『彼岸花が咲く島』書評」 - 『新潮』2021年11月号

脚注

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  1. ^ 瀧井朝世 (2018年5月16日). “作家の読書道 第194回:石井遊佳さん その1「お寺の書架で読書にふける」 (1/6)”. 本の雑誌社. 2022年9月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e “『百年泥』著者プロフィール”. 新潮社. 2022年9月3日閲覧。
  3. ^ 早稲田大学法学部ホームページ. 2018年1月23日閲覧。
  4. ^ 瀧井朝世 (2018年5月16日). “作家の読書道 第194回:石井遊佳さん その3「幻の第一作、ご一報求む」 (3/6)”. 本の雑誌社. 2022年9月3日閲覧。
  5. ^ a b 瀧井朝世 (2018年5月16日). “作家の読書道 第194回:石井遊佳さん その4「本格的に小説を書き始める」 (4/6)”. 本の雑誌社. 2022年9月3日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g 瀧井朝世 (2018年5月16日). “作家の読書道 第194回:石井遊佳さん その5「仏教を学ぶ&インドへ」 (5/6)”. 本の雑誌社. 2022年9月3日閲覧。
  7. ^ 石井遊佳「私と受験」『中央公論』2月号、中央公論新社、2020年、113頁。
  8. ^ a b c “芥川賞に若竹千佐子さんと石井遊佳さん 直木賞に門井慶喜さん”. 東京新聞. (2018年1月17日). http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018011702000130.html 2018年1月20日閲覧。 
  9. ^ 石井裕「妻・石井遊佳の芥川賞受賞に想う」『新潮』2018年4月
  10. ^ 瀧井朝世 (2018年5月16日). “作家の読書道 第194回:石井遊佳さん その6「チェンナイでの執筆と読書」 (6/6)”. 本の雑誌社. 2022年9月3日閲覧。
  11. ^ 文藝春秋:平成三十年四月一日 四月号』株式会社文藝春秋、2018年、194、195頁。
  12. ^ “荒唐無稽な物語に通底する「現実への懐疑」 石井遊佳さん芥川賞受賞第1作「象牛」”. 毎日新聞. (2020年12月20日). https://mainichi.jp/articles/20201218/k00/00m/040/190000c 2022年2月13日閲覧。 
 第158回芥川龍之介賞
 
1930年代 - 1950年代(第1回 - 第42回)
1930年代
1940年代
1950年代
 
1960年代 - 1970年代(第43回 - 第82回)
1960年代
1970年代
 
1980年代 - 1990年代(第83回 - 第122回)
1980年代
  • 第83回 該当作品なし
  • 第84回 尾辻克彦「父が消えた」
  • 第85回 吉行理恵「小さな貴婦人」
  • 第86回 該当作品なし
  • 第87回 該当作品なし
  • 第88回 加藤幸子 「夢の壁」/唐十郎「佐川君からの手紙」
  • 第89回 該当作品なし
  • 第90回 笠原淳「杢二の世界」、高樹のぶ子「光抱く友よ」
  • 第91回 該当作品なし
  • 第92回 木崎さと子「青桐」
  • 第93回 該当作品なし
  • 第94回 米谷ふみ子「過越しの祭」
  • 第95回 該当作品なし
  • 第96回 該当作品なし
  • 第97回 村田喜代子「鍋の中」
  • 第98回 池澤夏樹「スティル・ライフ」/三浦清宏「長男の出家」
  • 第99回 新井満 「尋ね人の時間」
  • 第100回 南木佳士「ダイヤモンドダスト」/李良枝「由煕」
  • 第101回 該当作品なし
  • 第102回 大岡玲「表層生活」/瀧澤美恵子「ネコババのいる町で」
1990年代
 
2000年代 - 2010年代(第123回 - 第162回)
2000年代
2010年代
 
2020年代 - 2030年代(第163回 - )
2020年代
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