彼女の言葉のやさしい響き

彼女の言葉のやさしい響き
ジェームス・テイラー楽曲
収録アルバムジェームス・テイラー
英語名Something in the Way She Moves
リリース1968年
録音
  • 1968年
  • トライデント・スタジオ(英語版)
ジャンルフォークロック
時間2分54秒
レーベルアップル・レコード
作詞者ジェームス・テイラー
作曲者ジェームス・テイラー
プロデュースピーター・アッシャー

彼女の言葉のやさしい響き」(かのじょのことばのやさしいひびき、英語: Something in the Way She Moves)はジェームス・テイラーが作詞作曲した曲で、1968年にアップル・レコードから発売されたテイラーのデビューアルバム『ジェームス・テイラー』に収録された。この曲はトム・ラッシュ(英語版)ハリー・ベラフォンテなどの他のアーティストにもカバーされた。歌い出しの歌詞はジョージ・ハリスンビートルズの楽曲「サムシング」を作るひらめきを与えた。2017年7月31日のサンフランシスコのザ・スターでのテイラーのステージでのトークによれば、これはテイラーがアップル・レコードと契約する前にオーディションとしてポール・マッカートニーとハリスンの前で演奏した曲だった。

ジェームス・テイラーのバージョン

「彼女の言葉のやさしい響き」はロマンチックな歌である[1]ローリング・ストーン誌の評論家、ジョン・ランドーはこの曲を「ある種の超越」についてのものと見なしている[2]。テイラーはこの曲をアコースティックギターの伴奏だけで演奏した[2]

著述家のバリー・アラン・ファーバーは「彼女の言葉のやさしい響き」を「心地よさと力強さ」がある、恋愛に関するお気に入りの曲として使用している[3]。彼は特に以下の行に注目している:

It isn't what she's got to say
But how she thinks and where she's been
To me, the words are nice, the way they sound
それは彼女が言わなければならないことではない
しかし彼女がどのように考え、どこに行ったのか
言葉は素晴らしい、その響き方が

これらの行でテイラーは歌では珍しく恋人が彼を落ち着かせるのは彼女の声の響きであることを示している[3]。ファーバーは、魅力的なのは、それがテイラーに母親の声を思い出させるのではないかと推測し、テイラーは若者の頃に世話になったことを思い出すことで癒されているのではないかと推測している[3]

ファーバーはまた、多くの人々が「世界に十分にしっかりと繋ぎとめられていないことを恐れている」という気持ちを効果的に表現しているとして、これらの行も強調している[3]

Every now and then the things I lean on lose their meaning
And I find myself careening
Into places where I should not let me go.
時々、私が頼りにしているものはその意味を失い
私は私を行かせてはいけない場所へと
急降下している自分に気づく

オールミュージックの評論家、リンジー・プラナーは「彼女の言葉のやさしい響き」をアルバム『ジェームス・テイラー』の「注目すべき収録曲」と見なしている[4]。オールミュージックの同僚評論家、デヴィッド・R・アドラーはこの曲を「テイラーの最も素晴らしいメロディーの一つ」と述べている[5]。『ローリング・ストーン・アルバム・ガイド』の評論家、マーク・コールマンはこの曲が『ジェームス・テイラー』の「ハイライト」であることを認め、この曲を「魅力があり」、テイラーの将来のレコーディングの道筋を予見するものと述べている[6]。テイラーの伝記作家、ティモシー・ホワイトはこの曲を「疑いなくテイラーの『ジェームス・テイラー』での最も素晴らしい演奏」と述べている[7]。ホワイトはこの曲を「プレゼンテーションは惜しみなく」、「それ自体がエレガントで痛烈」だと表現した[7]ローリング・ストーンの評論家、ジョン・ランドーはテイラーが「メロディー、歌詞、ギター、そして声を自分のものにしている」ので、余裕のあるパフォーマンスとテイラーの「抑制された表現」が曲の力を増していると考えている[2]。マーティン・チャールズ・ストロングは、この曲を「記憶に残るオリジナル」であり、「テイラーを、それほど冒険的ではないにしても、一種の男性のジョニ・ミッチェルとしてマークした」と説明している[8]

テイラーは「彼女の言葉のやさしい響き」を1976年の『グレイテスト・ヒッツ』に含めたが、『ジェームス・テイラー』からの「思い出のキャロライナ」同様に権利関係の問題でこの曲を再レコーディングした[9]。この曲はまた、2003年のコンピレーション・アルバム『ザ・ベスト・オブ・ジェームス・テイラー(英語版)』にも収められている[10]。ライブバージョンはテイラーとキャロル・キングのライブ・アルバム『トルバドール・リユニオン(英語版)』に収録されている[11]。ソロでのライブバージョンは、ライブ・アルバム『ワン・マン・バンド(英語版)[12]、テイラー、ジョニ・ミッチェル、フィル・オクスの3人の名義で発売されたライブ・アルバム『アムチトカ』(2009年)に収録された。

「サムシング」への刺激

ジョージ・ハリスンは「彼女の言葉のやさしい響き」を非常に気に入り、歌い出しの歌詞をビートルズのアルバム『アビイ・ロード』に収録した「サムシング」の1ライン目に使用し、この曲はシングルしても発売され1位になった[13][14]。「サムシング」の構想の初期に、ハリスンはこの曲の出だしを "Something in the way she moves / Attracts me like a pomegranate" と拡張し、"pomegranate"(ザクロ)と言う言葉を他に適切な言葉が見つかるまで仮置きしていた[14][15][16]

テイラーは「ジョージがそんなつもりだとは一秒も思わなかった。彼が意図的に盗用したとは思わないし、音楽は全て他の音楽から借りている。だから完全に無視した」と述べている[13]。テイラーはさらに「彼女の言葉のやさしい響き」のエンディングがビートルズの「アイ・フィール・ファイン」に由来していることを認め、だから「因果は巡る」としている[13]

カバー・バージョン

「Something in the Way She Moves」
トム・ラッシュ(英語版)シングル
初出アルバム『The Circle Game』
B面 Rockport Sunday
リリース
規格 7インチシングル
ジャンル フォークロック
時間
レーベル エレクトラ・レコード
作詞・作曲 ジェームス・テイラー
プロデュース アーサー・ゴーソン(英語版)
テンプレートを表示

トム・ラッシュ(英語版)は「彼女の言葉のやさしい響き」を自身の1968年のアルバム『The Circle Game』でカバーした[1]。テイラーはオーディションのために1967年にエレクトラ・レコードを訪れた際にラッシュのためにこの曲を演奏している[7]。ラッシュのバージョンはシングルとして発売され、ニューイングランドのラジオ局で人気が出た[13][7]クロウダディ!誌(英語版)はアルバムThe Circle Game のベストソングとレビューし、ブルース・ラングホーン(英語版)カントリー・スタイルが全曲を通して美し流れ」、そして「彼(ラッシュ)は何事にも興奮しない」ので「ラッシュのボーカルのタイプは完璧にフィットしている」と述べている[13]

カントリー・アーティストのボビー・ジェントリー(英語版)は彼女の1970年のアルバム『Fancy』でこの曲を"Something in the Way He Moves"と言うタイトルでカバーした。

イアン・マシューズと彼のバンドのマシューズ・サザン・コンフォートは1970年のアルバム『Second Spring』で「彼女の言葉のやさしい響き」のカバーを録音した。

ハリー・ベラフォンテはこの曲を1971年のアルバム『The Warm Touch』の1曲目としてこの曲をカバーした[17]。ベラフォンテはこの曲をシングルとしても発売した。ビルボード誌は「彼女の言葉のやさしい響き」を『The Warm Touch』の傑出した曲と見なしている[18]。ビルボード誌はメロディーが「美しい」と呼び、ベラフォンテがこの曲に「彼独自の癒し」を与えていると述べている[19]

ミッチェル・フォアマン は2001年の複数のアーティストによるアルバム『Sketches of James: Selection from the Jame Taylor Songbook』にアコースティック・ピアノバージョンの「彼女の言葉のやさしい響き」を録音した[5]

脚注

  1. ^ a b Haney, S.M.. “The Circle Game”. Allmusic. 2014年4月5日閲覧。
  2. ^ a b c Landau, J. (1969年4月19日). “James Taylor”. Rolling Stone. 2014年4月5日閲覧。
  3. ^ a b c d Farber, B.A. (2007). Rock 'n' Roll Wisdom: What Psychologically Astute Lyrics Teach about Life and Love. Greenwood Publishing. p. 13. ISBN 9780275991647 
  4. ^ Planer, L.. “James Taylor”. Allmusic. 2014年3月5日閲覧。
  5. ^ a b Adler, D.R.. “Sketches of James: Selection from the James Taylor Songbook”. Allmusic. 2014年4月9日閲覧。
  6. ^ Coleman, M. (1992). DeCurtis, A.; Henke, J.; George-Warren, H.. eds. The Rolling Stone Album Guide (3rd ed.). Straight Arrow Publishers. p. 293. ISBN 0679737294 
  7. ^ a b c d White, T. (2009). Long Ago And Far Away: James Taylor - His Life And Music. Omnibus Press. ISBN 9780857120069 
  8. ^ Strong, M.C., ed (2002). The Great Rock Discography. Canongate. ISBN 9781841953120 
  9. ^ Ruhlmann, W.. “Greatest Hits”. Allmusic. 2014年4月5日閲覧。
  10. ^ Jurek, T.. “The Best of James Taylor”. Allmusic. 2014年4月6日閲覧。
  11. ^ Erlewine, S.T.. “Live at the Troubadour”. Allmusic. 2014年4月6日閲覧。
  12. ^ Erlewine, S.T.. “One Man Band”. Allmusic. 2014年4月9日閲覧。
  13. ^ a b c d e Thompson, D. (2012). Hearts of Darkness: James Taylor, Jackson Browne, Cat Stevens, and the Unlikely Rise of the Singer-Songwriter. Backbeat Books. ISBN 9781458471390 
  14. ^ a b Everett, W. (1999). The Beatles as Musicians: Revolver Through the Anthology. Oxford University Press. pp. 209, 247. ISBN 9780195129410. https://archive.org/details/beatlesasmusicia00ever_844 
  15. ^ Cross, C. (2004). Beatles-Discography.com: Day-By-Day Song-By-Song Record-By-Record. iUniverse. p. 389. ISBN 9780595314874 
  16. ^ Paul Du Noyer (2009年3月13日). “George Harrison's Uncertain Something”. 2013年5月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月16日閲覧。
  17. ^ Ginelli, C.. “The Warm Touch”. Allmusic. 2014年4月5日閲覧。
  18. ^ “Billboard Album Reviews”. Billboard: p. 54. (1971年2月20日). https://books.google.com/books?id=6QgEAAAAMBAJ&pg=PA54&dq=belafonte+%22something+in+the+way+she+moves%22&hl=en&sa=X&ei=lxBAU5nSFovfsASZsoLwDA&ved=0CCsQ6AEwAA#v=onepage&q=belafonte%20%22something%20in%20the%20way%20she%20moves%22&f=false 
  19. ^ “Special Merit Spotlight”. Billboard: p. 74. (1971年2月6日). https://books.google.com/books?id=7QgEAAAAMBAJ&pg=PA74&dq=%22james+taylor%22+%22hard+times%22&hl=en&sa=X&ei=E8WVU6jtIe_QsQS0jYHwDw&ved=0CEwQ6AEwCDgU#v=onepage&q=%22james%20taylor%22%20%22hard%20times%22&f=false 2014年6月9日閲覧。 
スタジオ・アルバム
  • 『ジェームス・テイラー』 - James Taylor
  • スウィート・ベイビー・ジェームス』 - Sweet Baby James
  • マッド・スライド・スリム』 - Mud Slide Slim and the Blue Horizon
  • ワン・マン・ドッグ』 - One Man Dog
  • ウォーキング・マン』 - Walking Man
  • 『ゴリラ』 - Gorilla
  • イン・ザ・ポケット』 - In The Pocket
  • 『JT』 - JT
  • フラッグ(英語版)』 - Flag
  • ダディーズ・スマイル(英語版)』 - Dad Loves His Work
  • ザッツ・ホワイ・アイム・ヒア -変わりゆく人々へ-(英語版)』 - That's Why I'm Here
  • ネヴァー・ダイ・ヤング(英語版)』 - Never Die Young
  • ニュー・ムーン・シャイン(英語版)』 - New Moon Shine
  • アワーグラス(英語版)』 - Hourglass
  • オクトーバー・ロード(英語版)』 - October Road
  • カヴァーズ(英語版)』 - Covers
  • ビフォア・ディス・ワールド(英語版)』 - Before This World
  • アメリカン・スタンダード(英語版)』 - American Standard
ライブ・アルバム
  • (LIVE)(英語版)』 - Live/Best Live
  • ワン・マン・バンド(英語版)』 - One Man Band
  • 『アムチトカ』 - Amchitka
  • トルバドール・リユニオン(英語版)』 - Live at the Troubadour
ホリデイ・アルバム
  • クリスマス・アルバム(英語版)』 - A Christmas Album
  • JTのクリスマス(英語版)』 - James Taylor at Christmas
コンピレーション・・アルバム
  • アンド・ジ・オリジナル・フライング・マシン(英語版)』 - James Taylor and the Original Flying Machine
  • 『グレイテスト・ヒッツ』 - Greatest Hits
  • クラシック・ソングス(英語版)』 - Classic Songs
  • グレイテスト・ヒッツ Volume 2(英語版)』 - Greatest Hits Volume 2
  • ベスト・オブ・ジェームス・テイラー(英語版)』 - The Best of James Taylor
EP
  • アザー・カヴァーズ(英語版)』 - Other Covers
シングル
  • 思い出のキャロライナ」- Carolina in My Mind
  • ノッキング・ラウンド・ザ・ズー」 - Knocking 'Round the Zoo
  • スウィート・ベイビー・ジェイムズ(英語版)」 - Sweet Baby James
  • ファイアー・アンド・レイン」- "Fire and Rain"
  • 「カントリー・ロード」 - "Country Road"
  • 君の友だち」 - "You've Got a Friend"
  • ロング・アゴー・アンド・ファー・アウェイ(英語版)」 - "Long Ago and Far Away"
  • 寂しい夜(英語版)」 - "Don't Let Me Be Lonely Tonight"
  • ワン・マン・パレード(英語版)」 - "One Man Parade"
  • 賛美歌(英語版)」 - "Hymn"
  • 愛のモッキンバード」 - "Mockingbird" (カーリー・サイモンと共演)
  • 君の愛に包まれて(英語版)」 - "How Sweet It Is (To Be Loved by You)"
  • メキシコ(英語版)」-- "Mexico"
  • 愛の恵みを(英語版)」 - "Shower the People"
  • ウーマンズ・ガッタ・ハヴ・イット(英語版)」 - "Woman's Gotta Have It"
  • ハンディ・マン(英語版)」 - "Handy Man"
  • 君の笑顔(英語版)」 - "Your Smiling Face"
  • ハニー・ドント・リーヴ・L.A.(英語版)」 - "Honey Don't Leave L.A."
  • 愛をいつまでも(英語版)」 - "Devoted to You" (カーリー・サイモンと共演)
  • アップ・オン・ザ・ルーフ」 - "Up on the Roof"
  • 憶い出の町(英語版)」 - "Her Town Too]"
  • ハード・タイムズ(英語版)」 - "Hard Times"
  • エヴリデイ(英語版)」 - "Everyday"
  • イッツ・グローイング(英語版)」 - "It's Growing"
  • チェンジ(英語版)」 - "Change"
その他の楽曲
  • ナイト・オウル(英語版)」 - "Night Owl"
  • 「彼女の言葉のやさしい響き」"Something in the Way She Moves"
  • サニー・スカイズ(英語版)」 - "Sunny Skies"
  • スティームローラー・ブルース(英語版)」 - "Steamroller Blues"
  • 目を閉じてごらん」 - "You Can Close Your Eyes"
  • ハイウェイ・ソング(英語版)」 - "Highway Song"
  • アイ・ワズ・フール・トゥ・ケア(英語版)」 - "I Was a Fool to Care"
  • バーテンダーズ・ブルース(英語版)」 - "Bartender's Blues"
  • 人生の秘密(英語版)」 - "Secret O' Life"
  • ミルワーカー(英語版)」 - "Millworker"
  • サマーズ・ヒア(英語版)」 - "Summer's Here"
関連事項
  • ディスコグラフィー(en)
  • ジェームス・テイラー・アンド・ザ・オリジナル・フライング・マシーン(英語版)
  • 『ワーキング』(en)
  • ヴォート・フォー・チェンジ(英語版)
  • トルバドール・リユニオン・ツアー(英語版)
  • カーリー・サイモン
  • ベン・テイラー(en)
  • サリー・テイラー(英語版)
  • ケイト・テイラー
  • リヴィングストン・テイラー(英語版)
  • アレックス・テイラー(英語版)
  • アイザック・M・テイラー(英語版)
  • 『断絶』
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